スリープツーリズムとは?眠るために旅に出る人が増える理由と、家でできる3つの真似方

睡眠
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旅行の目的が、観光でもグルメでもなく、ただ「眠ること」。

そんな旅のかたちが、スリープツーリズムです。

週末に寝だめをしても、月曜の朝がつらい。

そんな30〜50代のビジネスマンにとって、気になるテーマだと思います。

私自身は、まだスリープツーリズムを体験したことがありません。

そこでこの記事では、公開されている情報を調べて、わかったことと、わからなかったことを整理しました。

旅に出られなくても、家で取り入れられる3つのことも、最後にまとめています。

日本人は、どれくらい眠れていない?

OECDの調査をもとにした報道では、日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、調査対象33カ国の中で最も短いとされています(国内メディアによる報道を確認した数値です。正確な値はOECDの原典でご確認ください)。

国内の調査でも、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(令和元年)では、1日の睡眠時間が6時間未満の人は男性37.5%、女性40.6%でした。

年代別では、男性の30〜50代と女性の40〜50代で、4割を超えていると報告されています。

また、睡眠で休養が十分にとれていない人は、成人の約2割(21.7%)でした。

「家では、なかなか眠りに集中できない。それなら、環境ごと変えてしまおう。」

この発想から広がっているのが、スリープツーリズムです。

スリープツーリズムとは

睡眠の質を高めることを主な目的にして旅をする形で、ウェルネスツーリズムの一つに位置づけられています。

ただ宿泊先で眠るのではなく、ホテルやリゾートが「眠りのためのプログラム」を用意しているのが特徴です。

内容は施設によって違いますが、よく見られるのは次のようなものです。

  • 睡眠環境の整備:寝具、温度、湿度、照明、音などを、眠りに向けて調整する
  • 睡眠のプログラム:専門スタッフによる睡眠の相談や、呼吸法・瞑想などのセッション
  • 睡眠の計測:睡眠のデータを測って、帰宅後の改善に活かす
  • リラックスのためのケア:アロマやトリートメントなど

観光やグルメの旅が「何かをする」旅だとすれば、スリープツーリズムは「することを減らす」旅です。

その逆説的なシンプルさが、忙しい現代人に刺さっているのだと思います。

市場は伸びているが、数字には大きな幅がある

海外の調査会社は、スリープツーリズムの市場が今後も拡大すると予測しています。

たとえばFortune Business Insightsは、2026年の世界市場を約961億ドル、2034年を約2,659億ドル(年平均成長率13.56%)と予測しています。

ただし、金額は調査会社によって桁が違います。

調査会社基準年の市場規模2034年の予測年平均成長率
Fortune Business Insights約847億ドル(2025年)約2,659億ドル13.56%
Market.us約726億ドル(2024年)約2,379億ドル12.6%
MarketIntelo約48億ドル(2025年)約172億ドル15.6%

市場の定義や調べ方が違うため、金額そのものよりも、「どの会社も右肩上がりと見ている」という方向を見るのがよいと思います。

数値は、各社の公開ページの要約をもとにした2026年11月時点のものです。

国内と海外の事例

国内

  • ナインアワーズ:カプセルホテル。睡眠解析サービス「9h sleep fitscan」では、カプセル内の赤外線カメラ、集音マイク、体動センサーで、器具を身につけずに睡眠を計測します。心拍数やいびき、無呼吸の回数などが分かるレポートを、後日受け取れます(同意した利用者向け)。
  • ホテル1899東京(新橋):お茶と眠りをテーマにした宿泊プランを、期間限定で展開しています。2026年3〜4月は「お茶と眠りのめぐりステイ −1899 SLEEP JOURNEY−」として案内されていました。

海外

  • シックスセンシズ(Six Senses):睡眠の専門家と開発した「Sleep with Six Senses」を、2016年から展開しています。滞在前の質問票、寝具、睡眠の評価などで構成され、施設によって長期のプログラムもあります。

料金、内容、予約状況は変わります。

ご検討の際は、各公式サイトで最新の情報をご確認ください(本記事は2026年11月時点)。

旅先なら、本当によく眠れる?

ここは、期待しすぎないための大事な話です。

新しい場所での1泊目は、むしろ眠りにくいことが知られています。「ファーストナイト効果」と呼ばれる現象です。

米国のブラウン大学の研究(2016年)では、35人に研究室で2晩続けて眠ってもらい、脳の活動を調べました。

すると、1晩目だけ、左脳の活動が右脳と違う状態になり、その差が大きい人ほど、寝つくまでに時間がかかっていました。

研究チームは、慣れない環境で、脳の一部が「見張り番」のように警戒している可能性を指摘しています。

つまり、「旅に出れば、必ずぐっすり眠れる」とは限りません。

これは私の推測ですが、1泊だけだと最初の夜の影響を受けやすく、連泊できるなら、2泊目以降の方が、プログラムの良さを感じやすいのではないでしょうか。

いつもの枕や、寝る前のルーティンを持っていくのも、ひとつの方法です。

一方で、仕事の連絡から離れられることや、「今は休んでいい」と自分に許可を出しやすいことは、旅の良さだと思います。こちらは研究というより、私の感覚です。

旅に出なくてもできる、3つの真似方

① 寝室と夜の明かりを「眠る向き」に整える

寝る前の数時間の明るさは、眠りに影響すると報告されています。成人116人の研究では、寝る前の8時間をふつうの室内灯の下で過ごした人は、薄暗い部屋で過ごした人より、メラトニンが分泌される時間が約90分短かったとされています(Gooley et al., 2011)。

夜は照明を落として、寝室は暗く静かに。
光については「色」より「量」が大切という話をこちらの記事に、寝具の中の温度や湿度についてはこちらの記事にまとめています。

② 計測は「週に1回の振り返り」だけに使う

睡眠を測るのは、改善点を見つけるためです。ただ、数値を気にしすぎて、かえって眠れなくなることもあります。

毎日の点数に一喜一憂せず、週に1回、傾向を見る程度で十分だと思います。

詳しくは睡眠トラッカーと不眠の逆説の記事をご覧ください。

③ 「眠るための日」を、予定に入れる

旅の一番の価値は、「眠ることを目的にしていい」と自分に許可を出せることだと思います。

月に1日でいいので、予定を入れない日をつくり、昼寝をするなら15時前に20分程度、夜は早めに布団へ。

ただし、起きる時刻は平日と1時間以内にそろえてください。

休日の寝坊は、月曜の不調につながると言われています(社会的時差ぼけの記事)。
私が実践している「起きる時刻だけ固定する」やり方は、こちらの記事で書いています。

旅より先に、受診が必要なケース

強いいびきがある、眠っている間の呼吸停止を指摘された、日中に耐えがたい眠気がある。

こうした場合は、睡眠時無呼吸症候群などの可能性があります。

旅で環境を変える前に、医療機関(睡眠外来など)に相談してください。

スリープツーリズムは、病気を治すものではありません。

まとめ

  • スリープツーリズムは、睡眠の質を高めることを目的にした旅。市場は拡大予測だが、金額は調査会社によって大きく違う
  • 旅先の1泊目は、ファーストナイト効果で眠りにくいことがある。期待しすぎず、連泊や慣れた寝具も検討する
  • 旅に出なくても、①夜の明かりと寝室を整える ②計測は週1回の振り返りに ③眠るための日を予定に入れる、は家で取り入れられる

私も、いつか試してみたいと思っています。その前に、まずは今夜の照明を、少し落とすところからです。

参考にした情報

  • OECD「Time use across the world」(2021年)に基づく報道、厚生労働省「国民健康・栄養調査」(令和元年)
  • Tamaki et al., Current Biology, 2016(紹介記事)
  • Gooley et al., Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism, 2011

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